ツルツルもフサフサへ!iPS細胞やHARG療法の毛髪再生医療の最前線
日本人男性で薄毛だと思っている人は1260万人と言われていて、薄毛を気にしている人は800万人と言われています。
育毛剤を使ったり、生活習慣を変えてみたり、医療機関で医薬品を処方してもらったりと人それぞれ行なっている対策はあると思いますが、短期間で髪がフサフサになる画期的な方法は今のところ無いように思えます。
ところが、短期間でフサフサになれるよう毛髪再生医療の研究が実用化に向けて加速しているようです。
気になる毛髪再生医療の代表的なところを調べましたので、ご紹介します。
この記事の目次
毛髪再生治療の最先端「HARG療法」
出典:HARG治療センター
現在、実際に認定医療機関で受けられる毛髪再生医療は「HARG療法」になります。
HARG療法は、自己複製能と様々な細胞に分化する能力(多分化能)を持っている特殊な細胞である幹細胞から抽出された150種類以上の成長因子を直接頭皮に注入することで、乱れたヘアサイクルで長い休止期に入っている毛母細胞を刺激して細胞の分裂を活性化し、発毛を促進する治療方法です。
頭皮に注入する成長因子は、休止期に入っている毛母細胞を成長期に移行させ休止期を短くし、成長期に入っている毛母細胞は育毛のための細胞活動を刺激して毛髪の成長を促進します。
また頭皮に注入する成長因子には、頭皮の乾燥を防ぎ、潤いを与える成分も入っていますので、頭皮を健康な状態に保つことも出来ます。
さらに、毛髪の大部分を構成するタンパク質であるケラチンを作り出す毛母細胞(ケラチノサイト)を増やす働きを持つKGF(ケラチノサイトグロースファクター)も多く含んでいるため、増毛や発毛が見込めるのです。
ただし、HARG療法の発毛率は99%と言われていますが、HARG療法を受けても発毛しない人はいます。
それは、毛髪が残っていない人です。
休止期ではなく毛母細胞が死んでしまっている場合は、成長因子を頭皮に注入しても刺激されないので、発毛しない人が多いようです。
HARG療法は、頭皮に成長因子を注入する時に注射器を使いますが、痛みがあるため麻酔を使う人や複数回注入が必要なため痛みに耐え切れず断念する人もいるようです。
最近では注射を使わないHARG療法もあるようですので、注射を避けたい場合は調べて受けることをオススメします。
資生堂が取り組む毛髪再生医療
出典:日本経済新聞
2014年11月に施行された「再生医療新法」のおかげで、医療機関ではなくても治療用の細胞の培養や加工を企業が行えるようになりました。
資生堂は、神戸市に「細胞加工培養センター」を設置し、脱毛や薄毛に悩む人を対象にした毛髪再生医療の研究を本格的にスタートさせました。
研究の内容は、医師が頭皮から取り出した細胞を培養した後、脱毛部位に注入することで毛髪の成長を促すというもので、患者の細胞を使用するため、拒絶反応などの副作用がないのが特徴です。
カナダのバイオベンチャー企業レプリセル社と技術提携し、東京医科大学、東邦大学と協力し、2016年6月に脱毛や薄毛に悩む人を対象に毛髪を再生する臨床研究を始めると発表しています。
臨床研究は、患者の後頭部から直径数ミリの頭皮を採取し、毛髪の成長を促す細胞だけを分離し、資生堂の研究施設で分離した細胞を培養し、数カ月かけて数十個の細胞を数百万個に増やします。
細胞が増えた後、患者本人の薄毛になった場所に注入すると、細胞が衰えた毛根の近くに拡散され、毛根を刺激して元気な毛髪が生える状態に戻していくことを目指しています。
1本1本植え付けていく植毛と違い頭皮を移植するわけではなく、今ある毛根を再活性化させるのでカラダへの負担も小さく、採取する頭皮も少なくて済みます。
また、植毛は医師の技量に仕上がりが左右されてしまいますが、資生堂の研究では医師の技量に左右されることはなく、育毛剤や医薬品よりも短い時間で毛髪が増えていきます。
2018年に毛髪再生医療を事業化することを目指して研究は進んでいますので、待ち遠しいですね。
横浜国立大学が取り組む毛髪再生医療
2016年5月に横浜国立大学の研究グループが、マウスを使って「毛包」を大量に作製する実験に成功したようです。
毛包とは、毛根を包んでいる筒状のもので目に見える皮膚の部分は毛穴になっていて、毛包の底のほうには毛母細胞、毛乳頭があります。
毛包の周囲には毛細血管が存在していて、毛乳頭に酸素や栄養素を渡す役目も持っています。
毛包は胎児のときに形成され、その後あらたに毛包は作られることはないと考えられていますので、胎児の時に毛髪の数は決まっているようです。
毛包は、毛嚢(もうのう)とも呼ばれ、皮膚の中で毛髪を支えていたり、毛髪の生成にも大きく関わっています。
他の研究と違い毛包に着目したのは、毛包が他の組織と比較して消失と再生のサイクルが早いため、毛包組織に存在する幹細胞を利用すれば毛包の種のようなものを大量に作製出来るのではないか、毛包の種のようなものを移植すると毛髪が再生出来るのではないかと考えたからだそうです。
マウスへの実験では背中に毛髪を生えさせることに成功したようですが、人間の幹細胞でも同じように作製できるのか、広範囲に移植する方法はどうするのかなど課題もまだ残っているようです。
東京理科大学でも同じ研究をしていますので、これからに期待したい研究になっています。
慶応義塾大学が取り組むiPS細胞を活用した毛髪再生医療
出典:日本経済新聞
2013年にヒトiPS細胞とマウスの細胞を用いて、毛包が再現出来たことを発表しています。
ただ、不完全な再現になっていて毛包から生える毛の太さは実際の20分の1程度と細く、移植しても生えてくるのは産毛程度になっています。
マウスの細胞も混じっていますので、そのままでは人間に移植するのも難しいのではと思えます。
また、iPS細胞を使っているためコストも高く、毛髪1本あたり100万円程度と現実的ではない価格になっています。
まだまだ実用化への道のりは遠い研究ではありますが、この研究が進むと育毛剤などの開発が促進されると期待されているようです。
それは、医薬品の開発に使われている薄毛患者の細胞は、培養を繰り返しているため医薬品に対する耐性が出来ていて、反応が鈍くなっているものが多いので、開発があまり進まない状況になっています。
そのため、内服薬なども種類が少なくなっているのが実情です。
iPS細胞を使った毛包再生が実用化出来れば、医薬品への反応も良くなり、医薬品の開発が促進されるということのようです。
早ければ5年で実験環境を整えられるレベルのiPS細胞の毛包再生が実現できそうとのことなので、こちらは育毛用医薬品の進歩のために期待したいところです。
海外での毛髪再生医療
2015年にアメリカとロシアの共同研究チームが自己複製能と様々な細胞に分化する能力(多分化能)を持っている特殊な細胞である幹細胞を使って、毛髪を生えさせることに成功したとアメリカの科学誌プロスワンに研究成果を発表しました。
毛乳頭細胞はカラダの外では、細胞分裂が行なわれず増えもしないのですが、スペインの国立ガン研究センターが白血球の一種である「マクロファージ」が、毛乳頭細胞の分裂を活性化させることを発見したので、この技術を応用して毛髪を生えさせる実験を成功させたようです。
この実験では、毛髪が残っていない人にも毛髪を生えさせることが可能になっており、幹細胞から分化させた細胞を使うため低コストで大量の移植が可能になるという夢のような技術です。
現在はマウスでの研究結果なので、人間での臨床実験に移行するべく準備を進めている段階です。
こちらの研究も実用化されるのが待ち遠しいですね。
まとめ
毛髪再生医療の現状を大きく取り上げられたものを中心にご紹介しました。
まだ世の中に知られていない毛髪再生医療の研究は、医療機関でも、民間企業でも数えきれないほどあると思います。
今回ご紹介した中では、資生堂の研究が一番早く実用化されそうですので、その日が来るのが待ち遠しいですね。