抜け毛や薄毛が気になりだすと、テレビのCMや雑誌の広告や記事、インターネットでの検索などで必ず目にする「AGA」という言葉。
男性の薄毛を指す言葉なのですが、男性の薄毛がすべてAGAと呼ばれるわけではないので、AGAとはどういう症状なのか、原因は何なのか、どうやって症状を緩和するのかなどをご紹介します。
この記事の目次
AGAとは
AGAとは「Androgenetic Alopecia」の略称で、成人男性に多く見られる脱毛症なので、男性型脱毛症とも言われています。
日本人男性の抜け毛や薄毛の原因のほとんどがAGAだと言われていて、約1,000万人以上の人がAGAで悩んでいると言われています。
ある調査では、AGAに悩む人は全国で1,260万人いて、AGAを気にかけている人はそのうちの800万人、何かしらのケアを行なったことがある人は650万人だったそうです。
一般的には、AGAは30代から50代くらいの男性が発症する症状ですが、最近では20代の男性でも発症するケースが増えています。
日常的な数値にすると、日本人の成人男性の3人に1人がAGAか薄毛の悩みを抱えています。
アデランスのフィールド調査で世界の薄毛率を調べたものがあるのですが、日本は世界で14位に位置し、アジアでは1位という結果になっていました。
AGAを発症する人が増えたことが理由なのでしょうが、AGAを発症する原因がアジアの中で日本が一番多いということなのかもしれません。
AGAは男性型脱毛症のことですが、発症すると完治させることが難しく薄毛のままというイメージを持つ人も少なくありませんが、AGAを発症して薄毛になっても産毛が残っている場合が多く、毛包が存在している限り、AGAを治療して髪の毛を増やしていくことは可能です。
ただ、AGAは進行性があるため薄くなってきたと思っても何もしないでいると、どんどん抜け毛が増えて薄毛が進行していきます。
抜け毛が気になってきたら、早めに対策を打つことでAGAの症状を緩和し、抜け毛を減らし、薄毛を食い止めることが出来るのです。
AGAの原因
出典:TOMクリニック
AGAの主な原因として挙げられるのが、「男性ホルモン」と「遺伝」です。
男性ホルモンは主要な物だけでも5種類あるのですが、その中の男性の成長や健康を保つために必要な「テストステロン」がAGAの原因に関係の深い男性ホルモンとして考えられています。
テストステロンは、還元酵素のひとつである5αリダクターゼと結びつき、10倍~30倍も活動力が強力な「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変換されます。
ジヒドロテストステロン(DHT)は、毛乳頭細胞に存在する男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)と結びつき、TGF-βという増殖抑制因子を生み出し、髪の毛の成長を抑制するのです。
TGF-βには、毛母細胞の活動を低下させる働きがありますので、髪の毛が抜けやすくなったり、細く弱い髪の毛になったり、髪の毛の成長期を短くしたりして、上図のようにヘアサイクルを乱れさせるのです。
また、ジヒドロテストステロン(DHT)は皮脂を過剰に分泌させるので、頭皮の環境が悪化したり、角栓が作り出されやすくなり、毛穴を塞ぐことでも発毛や髪の毛の成長を阻害してしまいます。
5αリダクターゼは、1型5αリダクターゼと2型5αリダクターゼの2種類があり、最近の研究では2型5αリダクターゼがAGAの主な原因になっていると考えられています。
それは2型5αリダクターゼが、主に毛乳頭に多く存在することと、AGAを発症した人の脱毛箇所を調べると2型5αリダクターゼが多く検出されるからのようです。
AGAは、男性ホルモンであるテストステロンと還元酵素である5αリダクターゼが結びつくことで引き起こされますが、5αリダクターゼの量が少なかったり、働きが活発ではない場合は、AGAを発症する可能性が低いことが知られています。
5αリダクターゼの量や働きには個人差がありますが、両親のどちらかが5αリダクターゼの働きが活発な遺伝子を持っていれば、活発な方の遺伝子を受け継ぐ優性遺伝子なので、親族にAGAを発症した人がいれば5αリダクターゼの働きが活発なので、AGAを発症しやすくなります。
ハゲは遺伝すると言われる理由も、ここから来ています。
AGAの原因としては、他にも食事や生活習慣、ストレスが挙げられます。
日本人はアジア1位の薄毛大国だと冒頭でお伝えしましたが、食事の欧米化が原因になっていると考えられています。
代表的な欧米の食事は、高コレステロールで野菜はあまり食べず、肉が中心の食事になっているため栄養バランスが悪く、血液もドロドロになりやすいので血行不良になりやすいという特徴があります。
健康な頭皮や元気な髪の毛は、十分な栄養と酸素が血液に乗って頭皮に運ばれてきて、はじめて保つことが出来るものです。
ビタミン類やミネラル類、タンパク質などの髪の毛に必要な栄養素をバランス良く食事から摂り入れ、胃腸や内蔵が消化、吸収することでカラダの隅々にまで行き渡り、頭皮にまで送り届ける必要があります。
ところが、食事の欧米化や不規則な生活を送っていることで、必要な栄養素が不足していたり、胃腸や内蔵に負担をかけ続けることで弱らせ、食べた食事の栄養を十分に消化、吸収出来ずにいるため、頭皮へ十分な栄養が届かなくなっているのです。
こうした本人が気付いていない不健康な状態が、ホルモンバランスを乱すことでAGAを発症することが多いのです。
仕事などで蓄積されたストレスも、自律神経を乱しますのでホルモンバランスが乱れたり、免疫力の低下などを招いて毛母細胞がダメージを受けやすくなるために抜け毛が増える可能性が高くなります。
西洋医学的には、男性ホルモンと遺伝の2つがよく言われますが、明治時代より前は日本には薄毛の人はほとんどいなかったと言われていますので、食事やストレスなどの生活習慣の方がAGAの原因として大きいのではないかと管理人は考えています。
AGAの症状
出典:AGA-NEWS
AGAの症状は、生え際の両サイドから後退していくタイプや生え際の真ん中から後退していくタイプ、頭頂部から薄くなっていくタイプ、など様々なタイプがあります。
AGAを診断するために上図のような薄毛の分類が用いられていますが、これはハミルトン・ノーウッド分類と呼ばれ、AGAの症例をアメリカの医師ハミルトンがパターン別の分類を作成し、医師ノーウッドが改定したものです。
AGAの治療方法
AGAを発症しているかどうかは、まず専門のクリニックでAGAかどうかを診断してもらいましょう。
AGAは進行性の病気ですので、もしAGAを発症しているなら薬を服用することで進行を止める必要があります。
ただ、AGAの薬には副作用が報告されているため、副作用を嫌って薬を服用しない人もいます。
また、AGAはたとえ薬であっても効果に即効性はなく、継続していくことが重要なのですが、副作用が気になるのであれば、食事や生活習慣を見直すことでコツコツと緩和していくことも可能です。
AGA治療の代表的なものをご紹介します。
フィナステリド(プロペシア)
フィナステリドは、5αリダクターゼの働きを抑制する効果があり、ジヒドロテストステロン(DHT)の生成を阻害することから、AGAによる抜け毛を減らしていくために用いられる医薬品です。
フィナステリドは、もともと前立腺肥大症や前立腺ガンの治療薬として使われてきましたが、フィナステリドを投与した患者の中に髪の毛が生えてきた人が多くいたため、発毛効果などの研究が始まりました。
その後1998年にアメリカで販売され、2005年に日本でも認可が下り、医療機関で処方されるようになりました。
ミノキシジル
ミノキシジルは、毛細血管を拡張し血流を促進することで毛根を活性化させ、高確率で発毛が期待出来る医薬品で、頭皮に直接塗るタイプと錠剤を飲むタイプの2種類があります。
ミノキシジルは、もともと高血圧の治療薬として使われてきましたが、ミノキシジルを投与した患者の中に体毛が濃くなった人が多くいたことから、発毛効果などの研究が始まりました。
その後1980年代にアメリカで販売され、1999年に日本でリアップに配合され販売されるようになりました。
その他
AGAの治療として、フィナステリドとミノキシジルがスタンダードですが、効果を実感出来ない人達も一定数いることと、副作用が気になる人達もいることから、他の治療法も存在しています。
自分の後頭部など髪の毛がフサフサな部分の毛包を、髪の毛が生えていない部分に移植して発毛させる「自毛植毛」や、毛母細胞などを活性化させる成分を直接頭皮に注入する「HARG療法」などです。
また、研究が進んでいるのがiPS細胞を使った頭髪の再生医療で、毛包が死に絶えても発毛させることが出来るので、実用化が待たれる新技術になっています。
治療ではないけれど、AGAに効果のある習慣
AGAを治すために医療機関で受けられる治療方法をご紹介しましたが、時間はかかっても自然にカラダに負担をかけずにAGAを緩和していく方法があります。
また、医薬品による治療と合わせてここで紹介する習慣に変えていくことで、AGA治療の効果が高まります。
それぞれ見て行きましょう。
栄養バランスのいい食事
薬を使ってAGAを食い止めても、血流を改善しても、髪の毛が育つための栄養がなければ健康な抜けにくい髪の毛は育ちませんし、新しい髪の毛が生えてくることも難しいでしょう。
頭皮や髪の毛の健康は、カラダの健康が大切ですので、カラダを作る食べ物を栄養バランスのいい食事に変えることがAGAを緩和していくために一番気をつけないといけない習慣です。
特にインスタント食品やレトルト食品、スナック菓子など、食品添加物が多い食べ物はビタミン類やミネラル類の吸収を阻害する働きを持っていますので、出来るだけ食べる量を減らしていくことが大切です。
また、育毛にいいと言われる食材はいろいろありますが、それだけを食べても栄養バランスが偏りますので、食材の数を増やしておかずの品数を増やすことで食材に含まれる栄養素を気にすることなく、栄養バランスのいい食事に自然となっていきます。
AGAを緩和し、育毛を考えるなら、食事の習慣を変えることは必須です。
十分な睡眠時間
仕事が忙しいと生活習慣が不規則になって、睡眠時間も短くなりがちですが、十分な睡眠時間は育毛のためには欠かせない要素のひとつです。
寝ている間に分泌される成長ホルモンによって、髪の毛は成長していきますし、ホルモンバランスを整えたり、ストレスを解消したりと健康を保つ上でも睡眠はとても大切なのです。
特にゴールデンタイムと呼ばれる22:00~2:00の間に取る睡眠は、髪の毛にも健康にも重要になってきますので、この時間に寝る習慣を身につけるようにしましょう。
頭皮マッサージ
AGAを発症した人の頭皮は、ほとんどの人が固いことがわかっています。
固い頭皮は血行が悪く、頭皮や髪の毛に必要な栄養や酸素が届きにくいので、より固くなり頭皮の状態も悪くなり、抜け毛も増えるという悪循環を繰り返します。
頭皮マッサージをすることで、頭皮を柔らかくし、血行を良くすることは、抜け毛を減らすためにも大切な習慣です。
お風呂でシャンプーをするときに、頭皮の毛穴の汚れを揉み出すように丁寧に時間をかけてマッサージするだけで、毛穴に詰まった角栓も取れやすくなりますし、頭皮への刺激にもなりますので、一石二鳥です。
まとめ
この記事では、AGAとは何かをご紹介しました。
日本人の3人に1人がAGAだと言われていますので、抜け毛が増えて薄毛が気になっているのなら、あなたもAGAかもしれません。
ただ、素人判断をするよりは、専門の医療機関できちんと診断してもらって、必要であれば薬を処方してもらうようにして下さい。
薬の副作用が気になるのであれば、今の習慣を変えてじっくりとAGAと向き合うといいでしょう。
AGAは発症したら薄毛のままで治らないものではありませんので、薬にしろ、習慣にしろ、継続していくことが大切です。